普通に電話かけたら「毎度です!大阪のムラキです!」と挨拶をしています

毎度です!って大阪の商売人ってほんとに使うの?と思われがちですが、私はほんとに使っています。
儲かりまっか?は気心がしれたら使っていますね。

さて、人に話したくなる革の話。

革業界には「この職種がないと製品が作れない」「この人たちがいないと革業界はまわらない!」という専門職種の方々がおられます。
靴の職人50年やっている!という人やカバンの先生をやっています!という人でも会うことが少ない職種を紹介してみましょう。

今回は「漉き割り屋」という職種です。

同じ革でも製品のパーツによって厚みが違います

例えば、財布などでしたら外側部分は1,2mm、内側は0,8mmで作ることがあります。

「表も裏も同じ大きさでいいんちゃう?」

いえいえ、鞄や財布などは表は厚く、裏は薄く作ったほうが全体的に軽く、メリハリがあり美しく作ることが出来ます。

「たかだか0,4mm程度、たいした違いじゃないだろ!」と思いがちですが、革の業界では大きな違いです。
ですが皆さんもご家庭でこれらの厚みがどれだけ違うのかすぐわかる方法があります。

 

厚み0,2mmの大違いを実感してみる

女性の髪の毛と男性の髪の毛、触ってみたらわかりますが男性のほうが明らかに太いとわかります。
では、その太さの違いは、というとわずか0,1から0,2mm程度しかありません。
他にもお札1枚で0.1mm、新聞紙を2枚重ねると0,1mm、分厚いカレンダーで0,3mm。
こう考えると0,4mmって結構分厚いものです。

人間の手ってのは優秀ですね。
革も1mmと1,2mmを触ってみると明らかに違うことがわかります。

漉き、という作業が革業界ではものすごく重要

じゃぁ、革を販売している革屋さんはそれらの厚みをそれぞれで在庫を持っているのか、というとそんなことはありません。
注文を受けて「革1枚を1,3mm、革1枚を2mmに薄くします」「革の半分を0,6mm、残りをそのままで納品」などそれぞれに対して薄くしていきます。

革を薄くする工程を「漉き」と言います。
全体を薄くすることを「割り漉き」や「漉き割り」と呼びますが、「漉き」という一言で終わることも多いです。
「割り漉き」「漉き割り」の違いは東西の違いです。西が漉き割り、という言葉を使います。

 

この革1枚を薄くしてくれる加工屋=「漉き割り屋」さんですが、日本全国で東京大阪で数軒、姫路に1軒程度しか存在しません。
おそらく日本全国足しても10軒ないと思います。多分5か6軒。 それくらいレアな職種です。

以前撮影してYOUTUBEで紹介した割り漉き屋さんの動画があります。
是非見てみてください。そのうえでもうちょい詳しく解説していきましょう

漉きって結局革を削っているの?

違います。
輪っか状の刃物が高速回転しており、その上を滑らせることで革を上と下に分割して薄くしていきます。
上の面を吟、下の面を床革と呼びます。
革の世界的にはこの吟の部分がとても価値があります。
吟の部分を均一に、穴をあけることなく、仕上げる漉き工程はとても重要なわけです。

下記の写真で説明するならば上と下部分にベロリと分割されているわけですね。

動画見てみたけど、単に厚み調整して革を送り込んでいるだけじゃないの?

彼らのすごさを解説すると平気で1時間かかります。
それくらい奥が深く、技術を有する仕事です。

軽く説明するならば、、、、

革、というのは馬や牛、豚による動物種の違いや、ギュッとしまっているタンニン革、ふんわり柔らかいシワありのクロム革など、様々な種類が莫大に存在します。

お願いしている漉割り屋さんは厚み調整の目盛りがありません。
大きな大きなハンドルがあるだけです。

目盛りがあったほうが便利じゃないの?

「目盛りはあかん。信用出来ない。革は安定性に欠ける。表面の張りやなめし方、仕上げにより変わってしまうから目盛りは信用出来ないんや」

この言葉を解説しますと、、、

ギュッと締まっている革の2mmとふんわりとしたシワありの2mmでは同じ革でも密度が異なります。
割り漉き屋さんはそれらの表面の硬さや締まっているかどうか、などを指先の感触で確かめて微調整を行っていきます。
その上で「こっちの革は1枚だけ0,6mm、その次はふんわりとした革を1,2mm」など1枚1枚を瞬時に判断して機械をいじるわけです。
結局は指先の感覚が一番信用出来ます。

また、革は1枚1枚が形状が異なり、大きさが異なります。
大きい革は1人では到底作業できません。
送る人として最低でも1人、受け取る人として1人が必要となります。

機械があれば誰でもできる、という商売でもないですし、1人では到底出来ません。
ミスをしたら1枚数万円が消し飛ぶ経済的な危険性。もちろん高速回転する機械ですから物理的な危険もある商売です。

さぞかし工賃お高いんでしょ?

例えば私が働いている会社フェニックスでは自社の革は400円、他社持ち込みの革でしたら600円となります。
革の基本的な大きさ1枚だろうが、その1/5の大きさだろうが一律です。
あれだけの作業をたったの400円で行ってくれるんです、この仕事は。

割り漉き屋さんってのは本来は一定の厚みで大量に作業をしてなんぼ、の商売です。
1日あたり数百枚は作業しないとお給料が出せません。

彼らは本来「この20枚の革を全部一律1.0mmにしてね!」と言われて利益を出す商売です。
「この締まっているタンニン革1枚は1,2mm、このふんわりしたクロム革2枚は0,8mm、他にも、、」という1枚1枚がバラバラな指定を1日20枚以上持ち込むフェニックスみたいな会社は本来割り漉き屋さん的には美味しいお客さんではありません。
ほんとに迷惑をかけているなと頭が下がる思いです

こういうことをすると割り漉き屋さんは怒ります。

私が何回かやってしまった失敗としてホッチキスを革についたままにしてしまったことがあります。(・_・;)

高速回転している刃物の先端にホッチキスがあたってしまうとカツンっと欠けてしまいます。
ほんとーーーにわずかな欠けです。1mmあるかないかの世界です。
ですがこれを放置すると「薄くすけているゾーン」と「欠けているためその部分だけ分厚いゾーン」が交互に存在してしまいます。これは虎模様のように見えるため「トラが出ている」と言われてしまいます。

これは手持ちの革を手持ちの機械で漉いたものですが、裏面に縞模様が出ています。
これがトラ模様ですね。「トラが出ている」と言います。

このように厚みが均一ではなく、場所により革の厚みが分厚い・薄いが交互に出てしまうわけです。

で、このような事態になると、この欠けを治すために割漉き屋さんは欠けていない部分を全部研いで均一の厚みにしてしまいます。
それだけの刃物を浪費してしまい、研ぐ行為で時間がなくなってしまいます。

他にもクリップやタグをつけている細い針金なども刃を欠けさせる一因となります。

刃物ってどれくらいで交換するの?

動画の最後付近で刃物交換風景が見られます。
これらはだいたい7日~10日に1回程度交換するそうです。
彼らは常時研ぎながら仕事をしています。動画の中で火花が飛んでいますが、あれは漉きの作業をしながら砥石を当てていることで研ぎ作業も一緒に行っているからです。

もちろん研ぎをケチればその分刃物を買うお金を減らせます。その分儲かりますが、きれいに漉けないと信頼を失ってしまいますし、訂正作業などで時間を浪費してしまいます。
信頼と時間を考えると刃物はガンガンと研いで消費していったほうがいいわけです。

行ってみたい!どこにあるか教えて!

基本的に業者さん向けの専門職種となり、気軽に見学などができる場所でもありません。
そのためどこにあるのか、取引できるのか、などのお問い合わせはご遠慮ください。

漉き割り屋さんは皮革業界を支える縁の下の力持ち的な商売です。

以前バスツアーで見学をしましたが、参加者は「これを見たら厚みが0.2mm程度狂っても文句言えませんね」と驚かれていました。

皮革業界はこのような仕事がまだまだたくさんあります。

折を見て紹介していきたいと思いますのでよろしくおねがいします。

 

過去の関連blog: