11月になりました。先月のイベント続きの疲れから風邪>アレルギー性の咳という毎年お約束の流れでしばらく寝込み、早速の次のイベント続き。久々にセミナーを聞きに行きます。
目次
皮革消費科学研究会ってなに?
皮革衣料の普及とともに革衣料のクリーニングに関する技術相談が増大し始め、クリーニング業界、縫製業界、消費者センターなどから皮革の消費性能、あるいは皮革の正しい取扱い方などについての改善要求の声が強くなりました。当時(昭和52年頃)、皮革衣料のクリーニング技術はかなり未熟な面もあり、革衣料をクリーニング店に出さない方が無難であるという考えはかなり根強くありました。
当所では、これらの相談業務の経験から日本において革製品の需要を拡大するには、消費サイドに皮革の正しい知識を普及させることと皮革関連業界間の情報の流れをスムーズにすることが先決であると考えました。そこで、革衣料の品質の低さに困っている消費サイドの方々と皮革製造業界の方々とコミニュケーションを図り、相互理解ができるような交流の場を設立する計画を立て、研究会設立準備のために各界の方々と何度も意見交換会を開きました。
ということですが、私的には「年に1回行われる情報交換会が楽しくて見に行っている」という団体です。
情報交換会の発表は下記のような流れとなります。
各専門家に依頼して15分程度発表してもらう×3,4人ほど>
その後1時間弱、発表者が各ブースの前で立っているので個別にアプローチ>
後半、別の専門家が発表、各自15分ほど×3,4人>
発表者が各ブースの前であっているので個別にアプローチしてね
この流れですと詳しく聞きたい人は自分で聞きに行く。質問などで時間取られないので時間管理が楽、というメリットがありますね。
情報交換会は参加費として2000円かかりますが格安だとすら思います。
講演テーマと概要
〔1〕「産直レザー×ものづくり」野生鹿・猪革の新しい展開経済産業省 皮革産業連携推進事業
ブランド力強化推進グループ 代表 山口産業株式会社 ○山口 明宏 鹿と猪の獣皮の有効資源化を目指す産地活性事業「MATAGIプロジェクト」。全国100か所以上に及ぶ産地や団体を支援する野生獣皮活用事業のあらましを報告します。また、獣革活用の出口となる、平成27年度よりスタートした“獣皮産地~メーカー~デザイナー~小売店”を繋ぐ垂直連携事業「レザーサーカス」をご紹介します。 |
〔2〕インディゴレザーの挑戦ヒライコーポレーション ○平井 誠司
近年、藍染・インディゴ染革の話題性は高いものの市場での認知度は低く、その流通は限定的でしかありません。 この度、現流通上の主な障害である高価格・諸物性・革品質を大幅に改善し、世界的にもオンリーワンの、高付加価値・高品質の天然皮革を開発しました。世界で戦えるインディゴ藍染革とその革製品の創出のため、素材~小売のチームを組み、周到なブランディングを図りつつ、内外・新旧マーケットの開拓と創出に挑戦していきます。
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〔3〕タンナーが手がけた革のショールーム新設による新たなユーザーの開拓株式会社三昌 ○福本 真也 内田 淳
ネットユーザーの要望や1枚購入を希望する人達の需要を考えたとき、いつでも自由に革に直接触れて確かめられる『開かれた革の常設展示場』が必要ではないかと考えました。同時に、革づくりも見学でき、求める革が得られるようあらゆる相談も受付けます。 折り紙をテーマにデザインしたシャープで美しい外観。室内は正方形のボックスが積み重ねられた、独特の広いスペース。1,000種類の革が一度に見られる大胆な展示方法。階段の踊り場は、透明なガラスで足元に革をディスプレイ。ホールにはくつろげる広い喫茶空間を設けた『レザーギャラリー』をご紹介します。是非、一度ご来館下さい。
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〔4〕皮革・毛皮製品のメンテナンスクリーニングからメンテナンスへ新しい流れを創造する!!
宮地染工㈱ ○小西 慎吾
弊社は皮革・毛皮製品から布団、ジュータン、着物や染め替えなど一般クリーニング店では処理が難しい商品を専門的に取り扱っています。 特に皮革・毛皮製品は、その物性や特性から、洗浄および仕上げにも専門知識を必要としますし、変退色やシミを消す作業も一般の繊維製品とは大きく異なる難しさがあります。 近年はドライ溶剤の規制も厳しくなっていることから、水洗い処理の重要性が増しています。そこで、皮革や毛皮の特性を考えた新しいメンテナンス手法について提案させていただきます。
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〔5〕 我が社におけるエコマークを意識した積極的提案ならびに事業展開帝人フロンティア株式会社 情報企画部 ○ 沖本 智美
エコマークは環境ラベルⅠとして日本国内で大きな存在感を有し、国や自治体などへの納入品だけでなく、環境を意識した企業における採用の場においても、優先的選定の重要な判断基準となっています。それは、完成された最終製品だけでなく、その製品に使われている資材や部材にまで及びます。同マークは広い社会的認知を有することから、エコマーク認定が採用のカギを握ることも多くなり、顧客のエコマーク認定取得を前提とした製品開発に企業側も意識的に着手する機会も増えてきております。そのような状況下における弊社での事例の一端をご紹介します。 |
〔6〕革衣料関係法令等の改正についてお知らせ公益財団法人 関西消費者協会 ○西岡 彩子
平成27年3月31日に家庭用品品質表示法が改正され、衣類等の繊維製品の洗濯表示が平成28年12月から変更になります。革を使った衣類等についても新洗濯絵表示を用いて表示する必要がありますので、概要をご紹介します。 また、クリーニング事故賠償基準が16年ぶりに改訂され、10月1日に施行されました。ネットでのクリーニング受付など、新しい業態に対応する改訂ですが、毛皮製品の平均使用年数も改訂されていますので、併せてご紹介します。 |
〔7〕来春から革製品の販売が規制、アゾ染料の発がん性アミン使用の現状と対策 一般財団法人日本皮革研究所 ○大形 公紀「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」が改正され、2016年4月より特定芳香族アミン(発がん性アミン)を含む革製品(下着、手袋、中衣、外衣、帽子、時計バンド及び床敷物)の販売が規制されます。当財団では、これまでに数多くの皮革素材および製品に含まれる特定芳香族アミンを検査してきました。その結果から、現状と傾向の詳細の報告と、業界の対応をご紹介します。 |
〔8〕最重要JIS皮革試験法の改正に伴う情報提供(JIS K6550の改正)兵庫県立工業技術センター皮革工業技術支援センター ○松本 誠
平成24年度に一般社団法人日本皮革産業連合会の管理下に移行されて、皮革に関するJISの改正作業が始まりました。改正では、ISOの仕様にできるだけ整合性を持たせる方針です。これは、皮革に限らず、全てのJISにおいてその方向性で改正が行われています。今回の情報交換会では、改正作業が進んでいるJIS K6550の改正内容について説明を行います。 |
〔9〕新しい動物種の判別方法のご紹介一般財団法人日本皮革研究所 ○熊澤 雄基
一般的に、皮革の動物種の判別は、表面の毛穴や断面の繊維構造を観察して行っています。しかし、革の状態によっては判別が難しい場合があります(特に羊と山羊の識別)。一方、皮革の主成分はコラーゲンであり、そのアミノ酸配列は動物種によって異なる特徴があります。今回、その違いに注目した新しい分析技術を開発し、6種類の動物(牛、馬、羊、山羊、豚、鹿)間の判別が可能になったのでご紹介します。 |
順番に聞いて行った感想
感想やセミナー中にまとめた文面をそのまま載せていきます。文面の意味がどういう意味なのかを詳しく知りたい、という方はまた村木を直接捕まえた際にお尋ねください。
〔1〕「産直レザー×ものづくり」野生鹿・猪革の新しい展開
毎月タンナー見学会を催している山口産業社長の山口氏によるMATAGIプロジェクトの紹介、LEATHER CIRCUSの紹介。
雑感:年に1回ほどお客様から「鹿orイノシシを手に入れたが革を鞣したい」という質問が来ます。
自分で鞣したい!という時は本を紹介しますが、業者紹介してくれ、という時は山口産業さんのHPを紹介していました。産地ブランド皮なめし受託事業 | 山口産業株式会社 革のことなら革創庫
〔2〕インディゴレザーの挑戦
インディゴレザー=藍染め革
再現性が難しい。ばらつきがでかい。
失敗作の連続。革として成り立たないとしてではなくて投下資本の回収が難しい。
ds400円だとしても割に合うのか、それだけの価値があるのか。
値段は度外視。
世界で一番高い革でもいいじゃないのか、という考えも言われた。
成功率。
タンナーは100枚の革を仕込んだら100枚とも売る。藍染めの場合は7割しか成功しない。
ビジネスとしてまだ転がっていない。
コスト納期の問題。
こういうものを作りたいから最初から素材に向かう。
川下と川上がぶつかりながら作る形態が必要だな、と。
店頭に立っている人の意見のほうがストレートかつ前に進みそうだな、と。
日本製の良いところなど見たくない。ストーリー見たくない。
素材に命をかけているようなデザイナーが来る展示会に出すとプレッシャーがあるが反応はいい。
参考記事: 藍染めレザー、製品化進む | 繊研plus
〔3〕タンナーが手がけた革のショールーム新設による新たなユーザーの開拓
株式会社三昌 ○福本 真也 内田 淳
ショールーム写真紹介のみ
ここは以前訪れているのでまたblogで紹介します。
〔4〕皮革・毛皮製品のメンテナンス
クリーニングからメンテナンスへ新しい流れを創造する!!
宮地染工㈱ ○小西 慎吾
溶剤クリーニングではなく、水洗いクリーニング。
皮革や毛皮のクリーニングを一般からプロからまで受ける。
溶剤規制が続いている。>今後は水洗いの技術を高める必然性がある。
皮革や毛皮に対する知識不足。物性や特性を理解していないことによる処理ミス。洗えばいい、という考えで行うとミスる。
宮地染工が目指すもの。
風合い触感色目のメンテナンスを目指す。
丸洗い
宮地ウォッシュ 特殊洗浄方法。特殊な水洗い。部分的な染色補正。ワックス処理。
高級シューズのメンテナンスなど。
ワックス処理。ムートンの丸染めなど。
宮地ウォッシュでは特殊な洗剤を使用し、丸洗いは行わい。手でこまめに行い観察しつつ行う 皮革の部分的な変化に気づきやすい
〔6〕革衣料関係法令等の改正についてお知らせ
関西消費者協会 家庭用品品質表示法の改正
クリーニング事故賠償基準 2015年4月に大幅な改定。ネットの宅配クリーニングの発生のより環境が変わってきたため。
>説明責任、相互確認の条文化
説明が必要となる洗濯物。扱ったことのない素材や取り扱い表示のない製品、事故が頻発している素材を用いた衣類、完全に落ちるか不明な汚れがついた衣料、特殊クリーニングが必要な衣類。
プロの目からみてリスクを伴う可能性の高い品物が該当します。皮革類はこれに該当する。
洗濯の処理方法を使用者に説明する義務がある。
>商品別平均使用年数表改定。
平均使用年数は流行遅れ、着飽きた、などの理由で使用をやめる。
耐用年数とは異なる。バッグや靴、などの皮革製品が追加された。バッグ5年靴2年財布3年爬虫類財布5年。これらは流行やダメージなどにより算出された平均値。要は減価償却年数と言える。賠償の際に迅速に処置するための一種の基準。
要はクリーニングなどで問題が発生した時に「靴を3年履いているのに全額弁償、というのは酷だ。ほら、この平均使用年数に照らしあわせると2年じゃないか」というように裁判などで迅速に話をすすめるために作られた年数。ファッションの流行なども考えて年数は設定されている。
〔5〕我が社におけるエコマークを意識した積極的提案ならびに事業展開
帝人フロンティア株式会社 情報企画部
エコマークはなぜ必要なのか?
自治体公共関係の入札において、グリーン購入法と並んで、必須項目となっている。
環境意識の高い企業においてエコマークは製品、部材の選定基準となっている。アパレル、グローバルブランドなど。
採用の可否がこれにより変わってくる。
具体例
テント
防災毛布
自動車、住宅
裏地…自治体の制服、消防署、警察の制服の裏地にエコマーク認定されていないと採用しない。
自治体納入品では、グリーン購入法の特定調達品目だけでなく、エコマーク認定が必要とされるケースが多い。
エコマークは最終製品において、自治体や消費者が環境に良い品を選定する際の指標という役割だけでなく、その製品の一部の資材、部材においてもエコマーク認定されていることがその資材、部材の採用の選定条件になっていることがあります。
2020年の東京オリンピックを機に、ますますエコマークが選定指標として活用され始めている。
帝人はエコマーク認定を習得できることを前提とした開発を進めています。
エコレザーをとっているとエコマークを取れる、というありがたいシステム。
最終製品として取られることはないかもしれないが、部材資材に使われているのは強み。
雑感:
普通の作り手レベルならば関係のない話だといえますが、自治体に納入する品を作る、というのならばエコレザーやエコマークを意識するのは面白いな、と思いました。ちょうど購入していた飲み物にも帝人さんが作ったエコマーク「planntbottle」が入っていてびっくり
〔7〕来春から革製品の販売が規制、アゾ染料の発がん性アミン使用の現状と対策
一般財団法人日本皮革研究所 ○大形 公紀
来春から革製品の販売が規制、アゾ染料の発がん性アミン使用の現状と対策。
特定芳香族アミン 発がん性アミンを含む繊維製品。
革製品は手袋、防止、下地、外衣、床織物、など肌に触れる可能性があるものが対象。
特定芳香族アミンとは?
アゾ染料の中でも特定芳香族アミンと呼ばれる毒性があるものだけが問題。
製造は禁止されているが使用は禁止されていなかった。
今回24種類が禁止された。
24種類が検出された場合は、回収命令や罰金などの罰則がかせられる。
EU、中国、韓国、台湾などではすでに規制。
当財団での実測データ
2008年から測定開始。
革素材単体で600点、革製品で400点、染料そのものを測定してきた。
具体的な例
革素材としては発生率は2%。
革製品としては発生率は約3%程度。
対策
特定芳香族アミンの不使用宣言書を提出する。染色工程を行っているところが出すのが基本だが、実際は染料会社が出す。混合して使っている場合もあるのですべての染料をこれで保障できるか、というと問題があると思う。
実際に検査を行って含まれていないことを証明する。
>日本エコレザー基準、エコマークを利用すれば確実。
PL保険などに加入し、前もって対策をとる。
合成皮革や再生皮革は対象になるの??>経済産業省に確認。jisの中には今まで定義がされていなかったが、新JISでは定義されている。
タイムアップ!
4時半ほどまで発表が続き、どれも面白く聞いていたのだが、残りの「最重要JIS皮革試験法の改正に伴う情報提供」と「新しい動物種の判別方法のご紹介」も楽しみにしていたが4時で私はタイムアップ!
後ろ髪を引かれつつ退散。あぁ、悔しい。
特に新JISではお国が「革」を定義したとのことでぜひ聞きたかったのだがなぁ。
皮革消費科学研究会おもしろいよ
(私は全部楽しいですが) 興味ある方はぜひご参加くださいな。