先日カバンメーカーさんと話していて「職人志願を募集しても人が来ない!今は売り手市場なのかな」という質問が来ましたので、現在の手作り品市場で人材不足なのはなぜかをちょっと回り道しつつ解説しておこうと思います。

多分革業界に限らず「少人数でできるものづくりの世界」で起きている問題です。

今のモノづくり世代は第四世代まで来ている。

順に解説すると

第一世代…モノづくりで食べていくにはカバン会社なりの製造会社=メーカーに入らないと駄目だ!と思い、そこで働いてきた世代。もしくはその世代に教わったためにそれが普通と思っている世代。
高齢者が多い。メーカーのお偉いさんなどに多い。

第二世代…上記第一世代のようにメーカーに入ろうと思ったけど、入れなかった。でもイベントなりネットショップで食べていけるようになった世代。年齢的には40代前後

第三世代…モノづくりで食べていく際に「別にメーカーなんて入らなくてもネットで販売していったらそれでいいじゃん」「イベントに出て儲けたらいいじゃん」「将来的にお店経営したり、教室しながら食べていけばいいかな」と考えて行動している世代。

第四世代…本業があり、副業としてモノづくりをしている世代。
月々3〜5万円稼げればいいや、とか、材料費プラスα稼げたらいいや、と割り切っている。本業を辞めるつもりはない。

各世代は他の世代を理解しづらい

発生年代はこんな感じ

第一世代…もう15年たてばかなり生存者数は少なくなります。年齢的には60越えていますから。
第二世代…35歳から45歳くらいまでかな。
第三世代…30前後から40歳くらいまで
第四世代…25前後から40歳くらいまで。専門学校なり卒業して即座に第四世代突入もありえます。

面白いのは上の世代になればなるほど、下の世代を理解出来ません。
革業界は70越えても仕事が出来てしまう業界です。
そのため今でも現役の70歳職人なんてザラに存在します。
これらの世代は「食べていくために職人になったので今の時代、大学卒業して職人仕事したがるなんて理解できない!」と言います。

今現在50代の職人が少なく、結果的に40代も少ない

90年代後半までのバブル期において職人志願者数が少なくなりました。
誰もがモノづくりなんかよりも商社や銀行に入るのが勝ち組であり、好きな仕事につくことが出来ました。超売り手市場でしたから。

メーカーもメーカーで、生産を中国に移転したために国内の職人が食べていけなくなったり、という職人需要減少が生じ、結果的に今現在50代の職人なりメーカーの生産管理の絶対数は少なくなっています。

本来は今現在50代の世代が40代なり50代頭の頃に「メーカー辞めて別のメーカー立ち上げる!だから若い子雇う!」「職人だけど他の人雇って職人集団=職場を作るぜ!」という流れを作るはずだったのですが、バブルと生産の中国移転によりそのような流れが途絶えてしまっているように思えます。

ほんとに50代の職人って数が少ないんですよ

モノづくりで食べていくのは一種の麻薬

その一方でモノづくりには麻薬的に溺れてしまう側面も存在します。
私自身もそうですが、モノづくりって麻薬的に面白いですから。
(まぁ、この国はモノづくり、とか、職人、という言葉が大好きです。その割にそれらにお金出すのを渋るんですよねぇ)

麻薬的な面白さがあるために従来は「職人志願者募集するよー。安い値段だけど職人仕事できるよー」といえばある程度の人間は確保出来ました。

それが今の人材の売り手市場、ならびに第三,四世代の考え方=「別に自分でネットで売ればいいじゃん」「楽しくやってそこそこお金儲けできたらいいじゃん」というのはなかなか上の世代には理解出来ません。

今の時代人材を募集するならばネットで金を使わないと来ない

上の世代が厄介なのは「人材募集はハロー○ークでいいんだよ」的な考え方が未だに主流なことです。
革業界はIT化(あぁ、もう陳腐な言葉です)が遅れており、未だにネットの人材募集告知で数十万かけなきゃいけない、というのが理解出来ません。

「いやいや、材料店などで告知すれば来るんだよ」というのは甘い考え方です。
材料店に来るのは第2,3,4世代のタイプが多く、これらのタイプはすでに「お金儲けは別にメーカーに入らなくてもできる」と考えています。

「ネットに出せば人が来る可能性が高くなるわけじゃないだろ」
いえいえ、材料店で張り紙するよりも、ハロー○ークで告知するよりも数倍の人間が見てくれます。それらの中には上記にあげた第三、四世代じゃない層が多いです。
第三、四世代というのはネットを使い自分で売ることを覚えてしまった世代です。これらの世代はある程度学んだら辞めてしまう率がとても高いです。
それに対して数十万かけたネット告知を見て応募する人間はモノづくり第三,四世代よりもどちらかというと第二世代や第一世代のほうが多いように思えます。また、変に職人仕事に夢を見ていない人も多いようにも思えます。

数十万かけて人材獲得できたメーカーさんの参考意見

メーカーさん「ムラキさん、ーーという媒体に載せたら、「1人雇います」と決めると1人につき数十万払わなきゃいけないんですよ。昨年2人雇うつもりが結果的に4人雇いました。
4人×数十万かかりました。

でもね。
やっぱりーーに載せたら1ヶ月で30人弱応募来て、2人しか取るつもりなかったのに結果的に4人獲りたくなるほど魅力的な人材が来たんですよ」

カバン業界やめてリ○ルートで働いている方いわく「きちんと求人媒体にお金払えば人は来るんですよ!でもカバン業界はそこらをケチから人が来ない&若い人は根性ないとか言うんですよ!」

じゃぁ数十万かけたら人が来て安泰かというとそんなことはない

 

まぁ、それでも今の時代ネットを見たらミンネなりクリマなりでモノづくり販売しているのを目にしてしまいます。
そうなると数十万かけて一年仕込んだ人間が「これからはミンネなりクリマで儲けて生きていきますー」と言い出すことは十分ありえます。

でもそれは自分の会社で働くことに対して魅力を提示しきれない会社サイドの問題かと思います。
言い方悪いですが「この会社or仕事すっげぇおもしれぇ!儲かりそう!」と思わせられない会社は人を集めるのも定着させるのも苦労して当然です。

「職人志願は腕がないうちは安い給金でも良いんだよ。それで辞めてもどうせモノづくりやりたいやつはいくらでもいる!募集したらすぐ来るよ!」という時代ではもうありません。

第一世代が良い、第四世代が悪い、というような問題ではありません。
これらの世代差を理解しないと、他の世代の考えを理解共感出来ないし、人も集まらないし、仕事も出来ないよ、というのは留意したほうが良いです、という話です。

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