16年9月30日、10月1日の金土の本日は革日和♪in大阪ですが、10月1日土曜日だけフェニックス3Fで展示会を開催します。
展示会は東大阪のnijigamitool、香川の抜き型工房かわさき。それに姫路のタンナーさん高田製革所が来ます。
この記事では高田製革所さんがどういう革を作っているかを解説します。
目次
兵庫県姫路市たつの市には全国のタンナーの9割が存在します
タンナー協会なり皮革産業連合会に登録されている数と実際に稼働している数は食い違いがありますが、実際に稼働している数としては200弱と言われています。
それだけの数のタンナーが存在しますが、タンナーにも得意分野が異なります。
水場・仕上げと呼ばれる両方の工程を行うタンナー、仕上げだけを行うタンナー、家族3人でやっているタンナーから、社員数20人を越えるタンナー。
さらには他が持っていない特殊な機械を持っているタンナーなどなど、千差万別です。
そのため
参考リンク:皮から革で | 革ができるまで | わたしたちのくらしとまちではたらく人びと | わたしたちのたつの市
ブル=去勢していない雄牛
ブル、とは「去勢していない雄牛」=種牛です。種牛は雄牛の中でもエリート層となります。
エリートではない雄牛のほとんどは肉牛となりますが、その際に睾丸=たまたまを獲っちゃいます。(;´д`)
獲ることにより気性がおとなしくなり飼いやすくなる・他の牛と喧嘩をしないので傷がつかなくなる、肉質も柔らかくおいしくなる、といいこと尽くしです。
種牛になるには睾丸部分の体積を測り一定以上の大きさがあるなら晴れて種牛となります。それ以外は全部去勢です。
その率は1%以下。専門家曰く1万頭に7頭くらい、とのこと。
専門家「種牛になるには東大よりも遥かに難しいと言っています。」
あれだね、男の人は聞いているだけで股間を押さえたくなるね(;´д`)トホホ…
ブルの証となる革
下記の革は高田製革所さんから購入した玉袋の革です。こんなのとれるんだね
「たま~~~に原皮にくっついているんですよ。見たとおり立体的になっているので使用用途はほとんどありませんね。」
じゃ、じゃぁ、こちらは玉袋に対して棒だからまさか(゚A゚;)ゴクリ
「こっちはシッポの付け根ですね」
で、ですよねぇ。あぁ、良かった、、、
高田製革所さんはブルを得意とする
さて、姫路市のタンナー・高田製革所さんはそんなブルを専門に鞣しています。
去勢していないだけあってその表面は荒々しく波打ち、シボがたち、厚みもとんでもなくあります。
青底と呼ばれる分厚い靴底を作ってきた会社であり厚く硬いタンニン革を得意としています。
この厚みを出すために高田製革所さんはトンデモナイ作り方をしておられます。
裏打ち=フレッシングは普通機械を使うのに
またblogで書かないといけないのですが、先月姫路でこのフレッシングという手でやる昔ながらの工程を実際に体験してきました。
下記のようにかまぼこと呼ばれる板の上で刃物で肉の裏面=床部分をそぎ落としていくわけですね。
この工程を丁寧にやることで均質に薬品が入り、厚みも取れるわけです。
が、もちろんこんな工程を今の自分は手でやりません。普通はフレッシングマシーン=裏打ち機という機械にかけます。
これにより短時間かつ低料金でできるわけです。
姫路でフレッシングを学んだ後に高田製革所さんにおじゃまするとさっきまで実際に触っていたかまぼこ板が。。。
た、高田さん、フレッシング手でやっているの!?なんで!
高田さん「例えば原皮を水戻しして膨らんで5mmあるものをフレッシングマシーンにかけると4mmになるとしますよね?それは最終的に乾燥したら3mmちょいになるじゃないですか。ところが手でフレッシングすることで5mmが4,5mmになるわけですよ。そうなると乾燥した時に厚みが確保できます。
少しでも厚みを取りたかったら手でやるべきなんですよ」
乾燥は普通はネット張り
革を作る工程はそれぞれに意味がありますが、乾燥工程も色々とあります。
今の時代はネットに引っ張って固定して乾燥させるネット張りが主流です。
これですと効率的、かつ、少ないスペースで乾燥させられるわけです。
革の端っこに洗濯ハサミで挟んだような跡があると思います。これがネット張りの跡ですね。
で、高田製革所さんでは、昔ながらの板に釘で打ち付ける板張りと呼ばれる乾燥方法を行っています。
た、高田さん、板に打ちつけて乾燥って、昭和初期までだと思っていたんだけど、、、
「革が厚くて重いでしょ?ネットに貼るとネットがたわんでしまうんですよ。だから昔ながらの板張り乾燥です。だからブルには釘であけた穴の跡が残るんですよ」
正直こんな手でフレッシング・板貼り乾燥なんてやり方は中国でもやっているところはまずないと思います。
(もうちょい西の方にいったらまだあるかなぁ。。)
高田製革所さんのブル革はそれだけ手がかかっている革です。
高田製革所さんのブル革は革屋は扱いたくない
ブルという革の性質上革屋さんが扱うには非常にリスキーな革なわけです。
1.品質が安定しない…革1枚の中でもシボや厚みにムラがあります。原皮が異なればさらに異なります。
2.色も安定しない…これだけ原皮が異なると色の入りぐらいも安定しない=色が毎回異なる
3.入荷も安定しない…例えば10枚同じものが欲しい、というのも無茶ですが、必ず2ヶ月に3枚ずつ買う、というのも難しいです。
これら「安定しない」商材というのは革屋としては非常にリスキーです。
また、手がかかるため間に問屋が入り、値段を設定すると結構な高値になってしまいます。
じゃあ高田さん、どんな人がこの革欲しい、と言って、その際にはどういう対応しているの?
「東京のレザーフェアなどで見てもらい、商売にする、という時は『お手数ですが姫路の高田製革所まで来てください』と言っています。
これは上から目線の商売、というわけではないんです。ブルという素材の安定のなさや生産現場を実際に見てもらい理解してもらってから継続して購入してもらいたいんです。」
今回の展示会で見てもらって販売するってのは可能なの?
「ボクはタンナーであり革屋さんじゃないので在庫をドカンドカンと積んでいるわけじゃありません。
だから何枚も持って行く、ってことは出来ません。せいぜい3枚くらいじゃないですかね。
もちろん今回見てもらって質と金額に納得して買ってもらうのは構いませんし、継続して買いたい、というのも可能です。
継続の場合は実際に見に来てもらいたいです。
せっかく展示会に出るんですから色々な人に見てもらいたいです」
展示会に来られなくても高田製革所さんの革が見てみたい、と思われたら
高田製革所さんはインターネットをされてこまめな対応が出来る会社さん、というわけではありません。
もし実際に見てみたい、と思うならばレザーフェアに出ていることが多いのでその会場で見てみる・もしくは実際に姫路まで行っていくのが手となります。
タンナーさんは1枚2枚、という商売をメインとはしていませんのでもし「ここと付き合いたい!」と思う場合は最低注文数5枚、将来的に月々10枚から30枚は注文する覚悟を持って連絡してみてくださいな。
仮にこのblog記事を見て連絡したとしても高田さんの回答は同じです。「実際に姫路に来てください」ですね。
展示会場所日程
10/1(土) 11時~16時過ぎ
場所:レザークラフトフェニックス3F
出展社
nijigamitool…レザークラフトのための木工具展示即売・相談会など。当日参加okのワークショップもあり
抜き型工房かわさき…抜き型の展示・相談
高田製革所…ブル革の展示
参考リンク:高田製革所について|素材について 革・レザートートバッグの製造・通販|バッグファクトリー artigiano